自動販売機 夜中の自動販売機はあたたかい。取り出し口に手を入れてごらん。風もなく 手にやさしい。光るボタンを押したら 乾きを癒やせる。あの人は 夜道を歩いていた。月に追いかけられて 手袋もせずに誰にも顔を見られたくないから お面を着けていた。白い息に包まれてあの人は まだあたたかい骨だった。取り出し口に入れた手を 握り返され泣いていた。ぬくもりが かなしいと。次は つめたい を選んでごらん。