蜂かしら
きゅっとくびれた腰に 膨らんだ腹。
おおきな蜂が 飛んでいる。
三つ机を挟んだ先で 飛んでいる。
みなさんは 四方八方へ逃げた。
わたくしはどうか。
実は逃げ遅れました。
動けずにおります。
みなさんは 遠巻きに見ている。
円の中心には わたくしと蜂。
わたくしは机、椅子の類、もしくは鉛筆。
もう少しで無機物となり、やがて、
わたくしは幽霊、空洞、良心。
ここにないものよ。
蜂は わたくしの脳の稼働する低い音を聞いたかのように、
おおよそまっすぐ飛んできた。
みなさんは 息を飲みまして。
蜂は わたくしの首筋にとまり、
小さな六本の細い足先で、産毛を撫でた。
首を這いずり、
てん てん てん てん、と
七つ目の小さな点を 添えた。
最後の点に長い針を、
じっくり、脊椎を目指し、
肉が縮み、
痛みが
脳を掻き混ぜ、
呻きましょう。
わたくしは 蜂を鷲摑みにしましょう。
拳の中で暴れる 力強いバネの反発。
引き剥がされまい、腹をうねらせ、
頭は固く、すべらか。
引きちぎりましょう。
尻から針が抜け、
とろりと溢れるはらわたに、
手遅れと悟りました。
耳の奥から、わたくしは 滲みましょう。